7月1日 快晴
キキョウです。
今日から日記をします。
日記は毎日のことをノートに書くことです。
ノートはフーが預かります。
今日は、フーに赤ちゃんが生まれました。
小さいです。
たくさん泣いています。
目がフーにそっくりです。
リノの初孫だから、この赤ちゃんが次のオベル王です。
11月14日 雪
雪を見ました。
木も山も家の屋根も白いです。
道も白いのでふむと足が冷たくなります。
雪を食べました。
冷たいです。
11月18日 雪
ハルモニアは罰の紋章がほしいです。
だからあまり近づかない方がいいと教えてもらいました。
雪と同じ色だけど、シエの髪の毛は雪よりきらきら光ります。
こうもりになれます。
荷物が多いです。
紋章のことを聞かれました。
怒られました。
シエも紋章に詳しくないです。
どの紋章にも呪いがあるそうです。
罰の紋章の呪いはわかりません。
6月8日 雨
押し花をもらいました。
貼ります。
[菫]
すみれの花は後ろがふくらんでいます。
みつのたまるところです。
6月11日 曇り
押し花を作りました。
[花]
名前はわかりません。
雨が上がった後の夕方と同じむらさき色だからきれいです。
でも、花を殺してしまいました。
これからはあまり抜かないようにします。
2月29日 晴れ
うるう年です。
四年に一回しかないから、今日がたんじょうびの人はいつもよりたくさんみんなでお祝いします。
軍隊のさかもりにまぜてもらいました。
たんじょうびがわからないからいっしょにお祝いしてくれました。
みんなは隣の国と戦争しているそうです。
こっちがちょっと勝っています。
こっちのさいはいがうまいからです。
将軍の名前はわかりません。
副将軍の方が強いです。
さいはいをする副将軍はテオです。
ご飯をわけてもらったのであいさつしました。
5月5日 晴れ
こどもの日です。
こいのぼりをかざります。
かぶともかざります。
かしわもちを食べます。
サウスウインドウの慣習です。
グラは市長です。
市長はえらい人のことです。
グラはこのあたりは危ないから旅しない方がいいと言いました。
赤月帝国と戦争をしているからです。
でも、戦争のないところはないそうです。
12月3日 晴れ
フェリに会いました。
フェリはオベルに置いてある昔の日記を読みました。
フェリはずっと罰の紋章を探していました。
しばらくいっしょに旅をします。
フェリはだれかに似ています。
1月25日 雨
アルに会いました。
こまっていたので助けました。
フェリとなかよくなりました。
アルはひみつの身分です。
10月17日 曇り
ファレナ女王国に着きました。
フェリがむかえてくれました。
アルはフェリの奥さんになりました。
赤ちゃんの名前はリムです。
女王になります。
王子はカノです。
カノの目は水色です。
四人家族だけどガレもザハも家族みたいなもんだわははは、とフェリが言いました。
ガレとザハは女王騎士です。
フェリと固い信頼があります。
だから家族です。
血が繋がってなくても家族になれるとフェリが言いました。
家 族
10月26日 雨
アーメスがせめてくるかもしれません。
もしそうなったらフェリとアルを助けようと思います。
罰の紋章が役に立ちます。
カノとソルファレナを散歩しました。
カノは雨の日が好きです。
カノはねこが好きです。
「なあキキョウ、これ、日付どころか年代も全部バラバラじゃないか?」
「…うん」
「紙の切れ端、チラシの裏やティッシュにも書いたのか。旅の最中にはなかなかいいノートが手に入らないだろうけれど、さすがに紋章札の裏は止めた方がいいんじゃないかな」
「…全部鉛筆で書いたから」
「すぐ消せるって? キキョウ、こういうものは残しておく方がいいよ。キキョウが精一杯書き貯めたんだからね」
「…それって、いいこと?」
「ああ。もちろん。いいことだからこれからも続けるといい」
「…アス、大好き」
「こら、引っつくな、整理ができないだろう。――キキョウ! これ」
「…あ」
「読んでも……いいだろうか、俺が」
「…うん」
「古語だな。訳そうか?」
「…うん」
8月21日 晴れ
テッドは元気です。
今日の日記はテッドが書きます。
“キキョウが、書くことないだの作文は苦手だのとうるさいんで、代筆。
彷徨えるキューティージャーニーテッド様だ。
キキョウと再会するのは六十年ぶり、群島諸国戦争以来になるか。
まずはキキョウが紋章の呪いを跳ね除けて不老の肉体を得たことを、ここに記しておこうと思う。
今日キキョウと出会ったこと、キキョウがやたら執拗に俺へ文を認めさせようとすること、すべてが運命に思えてならない。
なぜなら今日は、俺の運命が変わった日だからだ。
だから俺なりにこの日記を借りて、後世に誓いを残そうと思う。
俺はある男に出会うため旅をしている。
いつ、どこで、どうやって、そいつに出会うのかはわからない。
ひとつだけわかっていることがあるとすれば、俺はその時までこの身に宿る紋章を守り通し、そいつに伝承するであろうということだ。
願わくば、アスフェル。
お前とキキョウが出会わんことを。
そのためなら俺はいかな苦難も受けて立とう。
そして俺は、アスフェル、お前と。
――心からの友になりたい。
ちなみにこの文面はキキョウの知らない古語で書いている。
もし読み解く者が現れたなら、どうかキキョウには黙っていてほしい。
だって、恥ずかしいだろ?