ふいに見せた横顔がどうしようもなくてキスをした。
「ごめ、ん、カイル。忘れて、」
(どうしよう)
(ごめん、カイル)
カイルに直接すきといったことはあったけれど、カイルはいつも
『俺も好きですよー』
と答えた。
『王族の方はみんなすきです!』
みんなと一緒じゃいやなんだ。
一番になりたいんだ。
(僕、わがまま、だ)
足は自然とドアへ向かった。
「王子!」
「わ、」
(何…で?)
てっきり見捨てられるかと思っていたのに。
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王子を引き止めると王子は困ったような、なきそうな不思議な顔をしていた。
「ごめんね、カイル」
また謝られた。少し痛かった。王子がつらいと俺もつらい。
(俺のせいだってのに)
「俺、色男ですねー」
「ばか」
ぽつりとそんな言葉をこぼした王子がこの上なくいとしいとおもった。
(いとしい?って、俺、もう)
さっき王子を引き止めた時点で気持ちなど決まっていたはずなのに。
「俺ねー、ずっと言おうと思ってたんですけどー、王子のすきとはちょっと違うかも知れないけど俺も王子がすきですよ?」
「それ、前もきいた」
「そうじゃなくて!・・・えっとー、俺、言葉へたくそだからなー、んー・・・」
「・・・」
王子は不思議そうな顔をして、突然したを向いた。
さらりと揺れる前髪の間から見えたうれしそうな顔。
(う、わ)
そして、ほとんど衝動的に。
前髪にキスをおとした。
びくりと動いた王子に
(何か、言わなきゃ)
「言葉で伝わらないなら、行動ですよねー」
ぱっと顔をあげた王子の顔がまっかで。
俺、わかったんだ。自分のこころがずっと前からゆれていたこと。
Side⇔
すべてが突然すぎて、まともに頭が動かなかった。
「ごめ、ん、カイル。忘れて、」
そうつぶやいた王子の顔はひどく何かにおびえた表情だった。
俺は女の子がすきだ。
ちょっとツれない子のほうがすきだったり、Mっていわれたり、
ミアキス殿に笑われたり、いろいろ。
そんなこと全部おっきく含めて女の子がすき。
でも王子への好きは少し違う。
(あれ?今、俺王子にキスされた?)
気がついて、俺はどんな顔をしたんだろう。
王子が部屋をでようとドアノブに手をかけたとき、ほうってはおけないと思った。
「王子!」
「わ、」
「おイタがすぎますよー」
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ふりむけばにこーっといつものように笑うカイルがいた。
「ごめんね、カイル」
「俺、色男ですねー」
「ばか」
(ほんと、ばか。嫌なら嫌って言えばいいのに)
「俺ねー、ずっと言おうと思ってたんですけどー」
(何、を?)
ほんとに嫌とか。カイルはやさしいからって甘えてた?
いつもはっきり断らずに笑ってくれるから?
ほんとは怖い。カイルに拒絶されることが、怖くてたまらないのに。
(いや、だ・・・!)
「王子のすきとはちょっと違うかも知れないけど俺も王子がすきですよ?」
(は?)
「それ、前もきいた」
「そうじゃなくて!・・・えっとー、俺、言葉へたくそだからなー、んー・・・」
「・・・」
(そうじゃ、なくて?)
これは、喜んでいいのかな。自然と頬が緩む。
でも見られまいとしたを向くと、頭にかすかな感覚。
「言葉で伝わらないなら、行動ですよねー」
(ヤ、られた…!!)
もし、君の気持ちがすこしでも動いているんなら、僕は惜しみなく愛を贈る。
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