l「……っ」
a「はい」
l「ん」
s「――なぁなぁお前らちょぉーーっといいか? 何だそのツーカーは? フタゴか? メオトか?」
l「ただのクラスメイトだけど」
a「見ての通りだよ。最上段の古い書籍を、司書室から脚立を持ってくる手間を面倒臭がったルックが背伸びで取ろうとしていただろう。さすがに見兼ねて手伝っただけ」
s「それをツーカーっつうんだよ!」
l「あ」
a「はい」
l「あと」
a「下?」
l「そっち」
a「はい」
s「だからそーやってな、何でお前ら互いの顔を見てもいないくせに相槌の連鎖だけで補強テープと鋏とついでにラベルシールとボールペンも必要だとかそれがどこに置いてあるかとかが伝わるんだ?」
a「先?」
l「うん」
s「え、雑巾? 何でアスフェルが雑巾を」
a「はい」
s「そうか、アスフェルが先に埃を乾拭きした本をルックが補修するのか? ……何なんだ? 何なんだお前ら!? 何でそれで分かるんだ!?」
l「図書委員の僕が今何をしてるのかこいつはよく分かってるからでしょ。さっきから頭の悪さをひけらかすみたいにだらだらくっちゃべって騒音公害提訴寸前のあんたと違って」
a「そんなくだらないことでいちいち手を止める暇があるなら、一刻も早く読書感想文くらい書き上げてしまえばどうだ? 『将来は俳優になりたいんです、俺、人の気持ちにシンクロするのが小さい頃から得意なんで、あはは』――週刊テレビ三五号、男性モデル特集記事より」
s「俺を貶すタイミングまでツーカーだな!!」