「…アー、スー!」
「キキョウも入るか? はい、ちょっと狭いけれど」
「…あつっ」
「トランの風呂は熱いのが良いんだぞ」
「…あついのもすき」
「トラン流を気に入ってくれたか? それは嬉しいな」
「…うん! ……うわあ」
「どうした?」
「…アスの、おっきい」
「……キキョウまでチェックしてくるか……」
「…?」
「前にも言ってやったと思うけれど。普通は他人へ簡単に下腹部を見せたり弄らせたりしないものだよ」
「…はい」
「無理に返事をしなくてもいい。怒ってないから」
「…うん。え、と。あんまりわかんない」
「そうか。あのな、コレが人体の急所であることは分かるか?」
「…うん」
「よし。自らの弱みを易々と晒していればそれだけ攻撃されやすくなるだろう。だから、コレは一般的に不特定多数の他人へ見せないものとされているんだよ」
「…そうなの?」
「キキョウには恥の概念が欠けているからなあ……」
「…んっと、それは悪いこと?」
「善悪の問題ではない。――そうだな、こうしよう。いいかキキョウ。須く大切なものは特別な人にしか見せちゃいけない」
「…うん。わかった」
「――ちょっと待て、今すぐ何かをしそうだから補足。よほど火急の事態でもない限り、ソレを見られないようにすることが相手への思いやりと礼儀だよ。そして、他人相手にソレを使用するのは好きと愛してるの違いが分かるようになってから」
「…?」
「分かるんだよ」
「…あい?」
「本当に誰かを愛すると、それまでとは世界が違って見える。苦しくなるし、飛び跳ねたくなる時もある。寝ても覚めても忘れられない」
「…それ、アスの探してるひと?」
「そう。愛するとね、どんなにつらくても探し求めてやめられないんだ」
「…ス、スー、なに?」
「ん?」
「…ストーカー!」
「……ちょっと、違うかな……。違うと思いたいんだけれど……」
「…ひとにみせない。気をつける。えへへ」
「ついでに他人のもそうまじまじと見ない」
「…はい」
「見たくても見ない」
「…うっ」
「ほら。背中を洗ってあげるから」
「…はぁい」