「何であんたがここにいるのさ!」
「…遭難」
簡潔に過ぎる釈明を聞かされて、ルックは追及を諦める。
衣服の裾をゆったりと払うレックナートが鈴を鳴らすように満ち足りた笑い声をこぼしてみせた。
「あなたがなかなか戻らないから、有能な小間使いを雇いました。ねぇ、キキョウちゃん」
「…うん、レッちゃん」
ルックは頭痛に思わずしゃがむ。
レッちゃんて誰だ、などと尋ねてはいけない。他ならぬ師匠自身がそう呼ばせているに違いないのだ。
キキョウはひとつも邪気のない顔できょとんとルックを見つめるや、ほにゃんと目元を和らげる。
毒気を抜かれた腹いせに、ルックは師匠をじと目見た。