書きかけ 7





アスフェルがクラウンを走らせる。
車内の方が、盗聴の心配もなく安心して話せるからと言う。それは出任せであって本当は単に車が好きなだけかもしれない。クライブに真偽の見極めはつかないが、クライブにとって鉄で守られた空間がそれなりに安らげる場所であるのは紛れもなく正しい事実である。引火しやすい燃料が同時に側へあるのさえ我慢すれば、アスフェルの運転する車内はかなり居心地が良い。そう、それだけで良い。
飽きもせずに社用車を転がせ続けること小一時間、ビルとコンクリートと排気ガスで充満していた風景はようやく田園に取って代わりつつあった。目的地などない。話すことそのものが目的だ。
「来年度にでも郊外へ引っ越そうと思うんだ。二十四になってまだ父様にべったりしているようじゃ、さすがに格好がつかないからね」
「……今、まだ二十三か?」
「クライブの七つ下。何度言ってもどうせ覚える気はないだろうけれど」
「必要がない」
「一部同感だな。年齢で人物を判断するのは早計だ」
一部、と釘を刺したのには何か理由があるのだろう。聞いてみたいと思ったが、聞き出す術をクライブは持たない。
「年齢で判断できることもあるからね。例えば人生経験の量」
「なるほど」
運転しながらクライブの顔をちらりと見遣っただけのアスフェルは、どうしてか、クライブの疑問を過たず読み取っていた。不思議な人物だ。
アスフェルは他人の内を暴くのに抜きんでている。どこまで知られているものか、ぞっとすることもないではないが、アスフェルは知って良いことと知るべきではないことの境目を非常によく知悉しているのだ。人並み以上に警戒心の高いクライブがアスフェルと打ち解ける理由がそこにある。


ただクライブを書きたかったのに空回りしています。
20090328