うずくまって、待っている。
彼の匂いがしみついたソファへは座れず、その背凭れへ引っついてみた。
床が冷たい。ソファも冷たい。しばらくじっとしていればやがて少しは温むのだけれど、冷えた心には今の冷たさがちょうど似つかわしいと思われた。
待つのはつらい。待つのはこわい。待つだけの時間はもったいなくて、待てど報われないのも虚しい。
壁の時計をそっと見上げる。あっという間に三度目の十二。
時計は長針の垂直に上向いている時が最も美しい。時間を数えきった満足感と、これから新たに回り始める億劫さを、――すなわち流れ巡りゆく季節の淡々たるさまを、ひたすら針が刻むのだ。これほど正確で無意味な数え上げをルックは他に見たことがない。
……さむい。
声にはしない。本当に寒くなるから。悲しくなって涙まで出て、情けないものに成り下がる気がする。自らの愚鈍を進んで証明したがるなんて馬鹿な女か腑抜けた男だ。彼の帰りを待ち侘びるという事実以上に、そのおろかさこそ耐え難い。
どうやって今までいくつもの冬を越してきたのだろう。あたたかいものを探して? 気晴らしに学業や仕事へ打ち込んで? 僕はどうやって、今までひとりで長い時間を待てたんだろうか。
ルックは膝を引き寄せた。寒さは今や足を駆け上り腹の下まで迫ってきていた。それでもルックはうずくまる。反抗であり、限界でもある。
もし立ち上がろうとしたならば、……四肢は引き裂かれてしまうだろう。彼のいない寂寥に、彼の足りない焦燥に。さすればルックはひとりで泣いて、ひとりで傷つき、ひとり枯れゆく。彼なしでは生きられなくなる。
自立心は恋情と相反するものなのだ。
ルックが彼を許容する上でようやく学んだ教訓である。
開けっ放しの窓の外、カーテンが膨らむその先に、細い月が浮いている。
(月が冴やかに白むのは。――孤独だからだ)
ルックは体をかたくした。
抱えた両膝へ顔を埋める。秒針の音を聞き、月影を浴び。寒さを感じ、温もりを慕い。
ひたすら彼を、待っている。