ロイがまたしても僕の格好をして城内を歩いていた。
僕は「悪戯を叱っている」という建前をことさら強調すべく、自室の前でわざと大きな怒声を発す。
ロイはしゅんと項垂れた。
僕には決してできない表情だ。
もしロイの耳が尖っていたら、今それはすっかり大地の中心へ向かって垂れ下がってしまっているのだろう。
似ているのは飽くまでも顔かたちのみであって、中に入っているモノが違えばひとはこうまで違うモノになる。
僕を唆すのは同じ見た目の何かに対する好奇心に違いない。
だって、こんなにも同じかたちで、どこまで違いが出るものなのか、その接点を確かめたいと思うのはひととしてごく自然な気持ちじゃないかと思うのだ。
僕はどうでもいいことを怒鳴りながら――何を怒鳴っていたかは、はっきり言うと自分でも思い出せない――ロイを寝室へ引きずり込んだ。
ばたん、扉が分厚く閉まる。
すべての姿と声を外界から遮断する、まるで牢屋のような音がしたことだろう。
ロイにとってはなじみの牢獄だ。
これからロイに強制するあらゆる淫猥な媚態を思い描くと、僕はにんまり微笑んだ。